6年前、卒業した小学校が廃校になると風の噂で聞いた。
そのときは仕事も忙しく、特に気に留めていなかった。
久しぶりに実家に帰らないといけない用事ができて、東京からのチケットを手配した。
実家の近くにある通っていた小学校。
近いという感覚が東京とは全く異なるけれど、ふと歩いて小学校へ行ってみようと思い立った。
小学校までの道のりは空が広く、車や人もほとんどいない。
時折、田んぼや畑に名前もわからない白い鳥がいるくらいだ。
あの頃の記憶が甦ってくるのを感じていると、いつの間にか小学校の入口に着いていた。
通い慣れたはずの短い坂道をあがると、校舎が見えた。
窓には、手作りの「ありがとう!!」という明らかに手作りの貼り紙があった。
廃校が決まったあと、なにかしら催しがあったのだろう。
校舎の扉を開けようとしたが、鍵かかかっている。
仕方なく外から校舎の中を覗くと、教室が見えた。
並べられている机と椅子は3つだけ。
こんなに小さい机と椅子だったっけ。。
20人はいたはずの同級生の顔を思い出していた。
こんな田舎に住むのが嫌で嫌で仕方なかった。
この田舎町を出てからも、自分の出身地をいうことが恥ずかしくて仕方なかった。
体育館を横目にグラウンドの方へ歩いて行く。
小さい倉庫がある。
鍵はかかっていない。
中には跳び箱や一輪車がある。
蜘蛛の巣を避けながら、空気の抜けたボールが転がっている中からソフトボールを1つ取った。
思い切りグラウンドに向かって投げた。
ガシャーンという音が響き渡った。
あの頃は全然届かなかったバックネットまで余裕で届いた。
ソフトボールを拾いに行く途中に、グラウンドになにか落ちていた。
空き缶だった。
俺の、俺たちの小学校を汚すんじゃねぇよ。
ソフトボールと空き缶を手に、錆び付いたボロボロのベンチに腰掛け、しばらく空を眺めていた。